16人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの……、蓬くん――彼、見付かったんですか……?!」
――単刀直入の質問であった。
これは、どう答えれば良いか……迷うな……。
「…………」
傷付かないように返す言葉を迷っている間の沈黙。
それが更に彼女の不安を煽った。
「……あの、もしかして……まだ見付かっては…?」
「あっ……いや……」
このまま言わずに黙るのは悪いな……。
息を吐き、一旦間を置いてから彼の行方を――その安否を告げる。
「……見付かりましたよ。人里から少し離れた南東で……」
「本当……?!」
この言葉を聞いて、疑問を持たずに、急速に表情が明るくなった。
「――ただ……」
「……“ただ”……?」
――しかし、次に出た言葉を聞いてその顔が曇り出す。
目の前に居る男の表情で察したから……。
言葉の意味を理解したから……。
「――息はもう……」
「!……そ…そんな……!」
最後まで言い終わる前に彼女は息を飲み、目を見張り、そして泣き出し、泣き崩れた。
「…………」
啜り泣く声が、心を締め付け、痛めつける。
「うぅっ……ひくっ……」
「…………」
何もする事が出来ない。
言葉を掛けることさえも……。
こういう時ってのは、人間(ヒト)は無力なんだと改めて痛感する。
最初のコメントを投稿しよう!