第1章 怪異な死体

42/72
前へ
/200ページ
次へ
「……彼女さん、立って下さい」 多少戸惑いがあったが、手を差し伸べ一言声を掛けた。 「ひくっ……あ、有難う御座います…」 彼女は声をしゃくりあげながらも手を掴み、立ち上がってくれた。 一息落ち着いてから、彼女に喋り出す。 「……気の利いた言葉なんて言えないが……。彼氏さんの事は気の毒ですが……元気を出して下さい。 取り敢えず、俺は彼の自宅を調べるので、彼女さんは一時お引き取りを。後程、少しだけお話を聞かせてもらいますよ」 「は……はい……」 力無く答え、彼女さんはこの場を離れた。 ――余程ショックなのは、痛い程分かっている。 彼女を見送った後、頭を優しく掻き毟りながらもう一度、息を吐いた。 「さてと……」 気を取り直して、被害者の野々村 蓬の自宅へと入る。 ………………… ……………… …………… ………… ……… …… … 一時間と三十分に及ぶ捜索を終え、彼を自宅を出る。 これと言って、彼が失踪したと云う証拠は得られなかった。 家の中は至って綺麗な状態。 紙一枚置いてやいない。 「……さて、次だな……」 ならば次に採るべき情報収集は、“聞き込み”だ。 有力な情報を得られる確証は無いが……。 取り敢えず野々村 蓬の彼女の所へと向かった。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加