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「……彼女さん、立って下さい」
多少戸惑いがあったが、手を差し伸べ一言声を掛けた。
「ひくっ……あ、有難う御座います…」
彼女は声をしゃくりあげながらも手を掴み、立ち上がってくれた。
一息落ち着いてから、彼女に喋り出す。
「……気の利いた言葉なんて言えないが……。彼氏さんの事は気の毒ですが……元気を出して下さい。
取り敢えず、俺は彼の自宅を調べるので、彼女さんは一時お引き取りを。後程、少しだけお話を聞かせてもらいますよ」
「は……はい……」
力無く答え、彼女さんはこの場を離れた。
――余程ショックなのは、痛い程分かっている。
彼女を見送った後、頭を優しく掻き毟りながらもう一度、息を吐いた。
「さてと……」
気を取り直して、被害者の野々村 蓬の自宅へと入る。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
一時間と三十分に及ぶ捜索を終え、彼を自宅を出る。
これと言って、彼が失踪したと云う証拠は得られなかった。
家の中は至って綺麗な状態。
紙一枚置いてやいない。
「……さて、次だな……」
ならば次に採るべき情報収集は、“聞き込み”だ。
有力な情報を得られる確証は無いが……。
取り敢えず野々村 蓬の彼女の所へと向かった。
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