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「あぁ、そうさ。夕方頃から警備の仕事さ」
「……警備?なら、別にわざわざ伝えに来なくてイイだろ……。交代制なんだから…」
その言葉は、正門の警備の事を指している。
――そう思ったからだ。
しかし、北上さんは綻ばせながら首を横に振った。
「違う、正門じゃない。収集家の自宅の警備だ」
「収集家……?何のだ?」
「骨董品だ。中には結構、値が張る物があってな。それが盗賊に目を付けられたらしくてな」
「……それで、警備って訳か……。でも何で夕方なんだ……?」
別に今からでも――昼からでも警備した方がイイんじゃないのか……?
そんな事を思って、質問の言葉として本人に尋ねてみた。
彼は自信ありげな調子な声で語った。
「ま、仕事時間の関係ってヤツさ。それにだ、盗賊なら人目に付くような昼間よりも夜に動くのが普通だろ?だからその前、夕方頃に警備するって訳だ」
「ふーん……」
徳利に残った最後の酒を、猪口に注いで少しずつ口に含んだ。
「――……で、その警備は俺と北上さんが担当する、で良いんですか?」
「そうだな。警備までまだ時間はあるから、“事件”の情報を集めるなり自由行動するなり、好きにして良いぞ。先輩の命令だ」
瞳をジッと見詰め、北上さんはそう言った。
「……なら、好きなようにさせて貰いますよ」
俺は財布にはイタいこの酒の代金を台の上に置き、席を離れ酒場を出た。
「あ、やっぱ酒一本頼む」
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