第1章 怪異な死体

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失踪――俺らはそう考えていた。 だから、その理由を探すために彼方此方歩き回って、奮起していた。 ……結果は、情報無しと云う有り様。 ならば、この推理の根本を変えてみる。 “失踪する理由が無い”→つまりは“失踪では無い”と云う事が必然的に繋がる。 何でそんな単純な裏返しに気付かなかったのか……、と心の中で自分に檄を入れる。 ――なら、失踪では無いと云う事は……慧音が言ったように“連れ去られた”と云う事に成る……。 つまり、誘拐……? それだとしても、疑問が残る。 「……連れ去られたとしても、“死体の半妖怪化”との関連性は見出せないぞ……?」 「そうかも知れない。だが、こうも考えられないか?“連れ去った犯人が、半妖怪化に関わっている”と」 「…………」 思わず、黙った……。 確かに、それも理に適っている。 「……なら、何の為に…――誰が何の目的で……?」 そんな事を次々に言い、考え、眉間にシワを寄せながら彼女を睨むように見詰めた。 慧音は腕を組み合わせたまま、静かに言い返した。 「それは解らない……。だけど、そんな感じがする……」 そして、表情を曇らしていった。 「……何だか慧音が言うと、合点がいくな」 「――あくまでも私の仮説だ。役に立たないとは思うが……」 「……いや、役には立った。これで少しは糸口が広がると思う」 「そうか。それは何よりです」
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