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失踪――俺らはそう考えていた。
だから、その理由を探すために彼方此方歩き回って、奮起していた。
……結果は、情報無しと云う有り様。
ならば、この推理の根本を変えてみる。
“失踪する理由が無い”→つまりは“失踪では無い”と云う事が必然的に繋がる。
何でそんな単純な裏返しに気付かなかったのか……、と心の中で自分に檄を入れる。
――なら、失踪では無いと云う事は……慧音が言ったように“連れ去られた”と云う事に成る……。
つまり、誘拐……?
それだとしても、疑問が残る。
「……連れ去られたとしても、“死体の半妖怪化”との関連性は見出せないぞ……?」
「そうかも知れない。だが、こうも考えられないか?“連れ去った犯人が、半妖怪化に関わっている”と」
「…………」
思わず、黙った……。
確かに、それも理に適っている。
「……なら、何の為に…――誰が何の目的で……?」
そんな事を次々に言い、考え、眉間にシワを寄せながら彼女を睨むように見詰めた。
慧音は腕を組み合わせたまま、静かに言い返した。
「それは解らない……。だけど、そんな感じがする……」
そして、表情を曇らしていった。
「……何だか慧音が言うと、合点がいくな」
「――あくまでも私の仮説だ。役に立たないとは思うが……」
「……いや、役には立った。これで少しは糸口が広がると思う」
「そうか。それは何よりです」
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