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「……ありがとな慧音。何か手伝えることがあったら、遠慮なく言ってくれ」
と、口にしながら立ち上がった。
「いや、手伝うことは無いよ。それに、手伝うことがあったとしても私一人で出来る物だから」
「……礼返しだ。何かしたい」
「う、うーん……」
少し強引気味なお願いだった。
しかし、彼女の考えがあったからこそ進展したのだ。
――所謂、これは“借り”とも言える。
この“借り”を借りたままでは、何か彼女に悪いような気がしてならない。
慧音は少し戸惑い、考え耽け、渋々と言った感じで話し掛けてきた。
「なら、稗田さんから歴史の資料を受け取って欲しいんだが……、頼めるか?」
「……あぁ」
「有難う」
「…………」
襖を開け、部屋を出て、そのまま寺子屋を出た。
そして、稗田さんの屋敷へ足を運ばせる。
稗田家当主 稗田 阿求――……確か、九代目か……?
羨ましい程、敷地の広い屋敷に住んでいるお嬢様だ。
何でも話によると、稗田家はかなり多くの資料を持っているらしい。
――彼女とは何回か話しをした程度であり、その資料とかは実際に見た事は無い。
そうこうしている内に、目的地に着いた。
目の前には純和風の門構えと木製の門。
開かれたその門から見えるは、風情のある広い庭と屋敷。
……すげぇな……。
どう表情すれば良いのか分からず、ありきたりの感想を思う。
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