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「ふぅ……」
二度目の湯呑みを空にさせて、置く。
「それで、今日はどういった御用件で?」
ついに、待ち望んでいた質問が彼女の口から発せられた。
……やっとか……。
「……慧音から頼まれてな。資料が欲しい」
「寺子屋の教材用のですね。持ってきますので、ゆっくりと待っていて下さい」
「あぁ……別に、急ぎの用じゃないからな……」
「ふふ、そうですね」
と言って、彼女は再び部屋を出た。
「…………」
また、無意味な時間が流れ始めた。
こういう時って本当……、刻(トキ)が流れるのが長く感じる……。
どうしてなんだろうな……?
――気持ちの問題だろう……。
兎角こうした時間を有意義に使いたいが、これと言ったことも無いが為に、結局はこの時と云う川の流れに身を泳がす。
稗田家に仕える使用人の歩く音だろうか……、廊下から足音が聴こえる。
今はそれすらも、時を有意義に過ごす醍醐味と成る。
「……………」
………………。
「――ん……?」
気付けば、また深い悩みの種を除去しようとしていたようだ。
――たった二分しか経っていないと言うのにだ。
「…………」
待つのは嫌いでは無いのだが、怠惰感が襲ってくる。
すると、廊下から足音がまた聴こえた。
……何か重みのある足音だな……。
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