第1章 怪異な死体

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「ふぅ……」 二度目の湯呑みを空にさせて、置く。 「それで、今日はどういった御用件で?」 ついに、待ち望んでいた質問が彼女の口から発せられた。 ……やっとか……。 「……慧音から頼まれてな。資料が欲しい」 「寺子屋の教材用のですね。持ってきますので、ゆっくりと待っていて下さい」 「あぁ……別に、急ぎの用じゃないからな……」 「ふふ、そうですね」 と言って、彼女は再び部屋を出た。 「…………」 また、無意味な時間が流れ始めた。 こういう時って本当……、刻(トキ)が流れるのが長く感じる……。 どうしてなんだろうな……? ――気持ちの問題だろう……。 兎角こうした時間を有意義に使いたいが、これと言ったことも無いが為に、結局はこの時と云う川の流れに身を泳がす。 稗田家に仕える使用人の歩く音だろうか……、廊下から足音が聴こえる。 今はそれすらも、時を有意義に過ごす醍醐味と成る。 「……………」 ………………。 「――ん……?」 気付けば、また深い悩みの種を除去しようとしていたようだ。 ――たった二分しか経っていないと言うのにだ。 「…………」 待つのは嫌いでは無いのだが、怠惰感が襲ってくる。 すると、廊下から足音がまた聴こえた。 ……何か重みのある足音だな……。
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