第1章 怪異な死体

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「んしょ……、んしょっと…」 「…………」 部屋に入ってきたのは紛れも無く阿求さんではあるが……。 その姿は両腕に積まれた資料の山で隠されていた。 「よっと」 その資料の山を卓袱台の上に『ドンッ』と音を出して置く。 その時生じた振動が伝わってきた。 「…………」 ――……唖然とした……。 そんな自分をお構い無しに、彼女は再び部屋を出た。 ……理由は大方予想は出来る。 数分後、再び彼女は同じ高さの資料を積んで戻って来た。 「これで、全部ですよっ…!」 辛かったのだろうか……、力強く声を発し、もう一度卓袱台に置いた。 二度目の振動が伝わる……。 依然として、自分は唖然としているであろう……。 「…………」 「また…考え事ですか……?」 「あ…、いや………」 言葉が詰まる……。 「……これが、寺子屋に必要な資料か……?」 「はい。新しく記したのも含めて、全部で五十冊あります」 「五十……」 笑顔で受け答えする阿求さんの言葉を聞き、卓袱台に置かれた二つの山を見上げ、呆然となる。 「……こんなに必要なのか…?」 「何時も慧音さんに渡すのはコレぐらいですよ」 「…………」 ホント……言葉に出来ねぇ……。 ……二回に分けて、持って行くか……。
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