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「あの、時雨さん。私手伝いましょうか?」
「いや……大丈夫、だ。阿求さんと同じ様にすっから」
十五冊程の資料を腕に抱えるようにして持つ俺に、阿求さんは心配混じりな声で言ってきた。
「ですが、ちょっと辛そうな顔してますよ?」
「……そうか……?そう見えんのか……?」
確かに重く、腕に重圧が掛かっているのは分かるが、『ツラい』とはこれっぽっち思ってない。
「はい。そう顔に書いていますよ」
「……あぁ、そうか」
彼女がそう見えるのなら、そうなのであろう。
――しかし、本当にそう思うとツラく感じるようになってきた。
「やっぱり私も手伝いますよ」
「……いや、女の子に手伝わせるのは悪いだろ。それに、また重い思いさせるのも……気が引ける…」
遠慮しようとやや堅苦しい言葉で言い返す。
すると、阿求さんはズイと寄って来て無理矢理奪うような形で積まれた資料を取った。
「私も手伝います!」
と、引き下がると云う言葉は何のその――そう言い放った。
「あ…オイ…、そんな勢い良く取っちまったら……」
「え…?…あっ!!」
彼女が声を上げた直後、資料の山が地面に叩き付けられたのである。
彼女の腕には数える程の資料が残ってはいた。
「あぁー、やってしまいましたー!!」
慌てふためき声を出し、急いで地面に散らばった資料をかき集めていく。
「…………」
……ムキになると、こうなるんだな……。
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