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彼女は一呼吸、間を置いてから続きを話した。
「解決…しそうですか?」
「……いや、これと言った情報が無いからな……。解決は、難しい……」
「そうですか……」
積まれた資料が陰となってあまり見えなかったが、チラリと見えた阿求さんの表情は不安一色だった。
当然だろう……此処に住んでいる者にとって。
それを見かねてか、もしくは無意識か―後者が強いと思う―この言葉から切り出した。
「――……ただ……」
「『ただ』?」
「少しは糸口が見え始めてはきた……」
「え…?」
その声と共に、彼女の足が止まる。
釣られて足が止まった。
「まぁ、それでもまだ難しい方だけどな…」
「でも、それでも良かったじゃないですか!」
まるで自分の事のように、確かに喜び表情を明るくした。
「……ま、俺じゃなくて慧音の御陰だけどな」
「慧音さんが?」
「あぁ……。彼女の閃きでな……流石、人里の皆を第一に想う人だ」
……到底…、適わないな……。
「それでも、それを解決するのが時雨さんの仕事ですよ」
「……。そうだな……解決出来るよう、努めるよ」
ちょっとだけ……笑ってみせて、二人は再び歩き出した。
それから十分も掛からない内に、寺子屋に着いた。
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