Ⅱ

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目に映る和成は、上下が逆さま。 ほんの目と鼻の先にいるのに。 わざとなのかどうか分からないけれど、目を合わせようとはしてくれない。 こんなに辛い体勢で、じっと見つめているのに。 彼はテレビ画面のほうに目をやったまま、動かない。 「せんぱあい」 「なに?」 血が上ってきたような気がして、クラクラする。 「……せんぱい」 ようやく絡んだ視線は、熱っぽくて。 どこからか甘い香りが流れてきたような気さえ、した。
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