Ⅱ

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ちょっと顔を上げれば、唇が触れ合うのに。 ほんの少し、彼が顔を下げてくれれば、重なるのに。 その僅かな距離感を楽しむように、動かない和成は、視線を逸らそうとはしない。 「早く」 こんなに近いのに。 目が吸い寄せられてしまったように、動かない。 彼の指が触れる箇所が熱を帯びて。 体中が熱かった。 「か……ずなり……先輩」 「だーかーら。『先輩』は、いらないっつーの」 彼がクスクス笑う度に、熱っぽい吐息が唇に触れる。 もっと距離を縮めたいのに。 恵美が、そう思っていることを知っているはずなのに。 彼は、あくまで知らん顔。
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