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ちょっと顔を上げれば、唇が触れ合うのに。
ほんの少し、彼が顔を下げてくれれば、重なるのに。
その僅かな距離感を楽しむように、動かない和成は、視線を逸らそうとはしない。
「早く」
こんなに近いのに。
目が吸い寄せられてしまったように、動かない。
彼の指が触れる箇所が熱を帯びて。
体中が熱かった。
「か……ずなり……先輩」
「だーかーら。『先輩』は、いらないっつーの」
彼がクスクス笑う度に、熱っぽい吐息が唇に触れる。
もっと距離を縮めたいのに。
恵美が、そう思っていることを知っているはずなのに。
彼は、あくまで知らん顔。
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