Ⅱ

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すると彼は唇をゆがめて、しばらく恵美を見下ろしてから 「また泣かれちゃ……たまんねえからな」 と、彼女の唇に人差し指を押し付けた。 ムニムニと感触を確かめるように、強く、強く。 「それに、逃げ出されても……困る」 恵美が顔を輝かせるのを押さえ込むように、グイグイ指を押し込んで、彼女の言葉を封じてしまった。 そんな乱暴な仕草でも。 恵美は嬉しくて仕方がなかった。 悩んでいるのは、自分だけではないと分かったから。 和成も、彼なりに……色々考えていたのだと、気付いたから。
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