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すると彼は唇をゆがめて、しばらく恵美を見下ろしてから
「また泣かれちゃ……たまんねえからな」
と、彼女の唇に人差し指を押し付けた。
ムニムニと感触を確かめるように、強く、強く。
「それに、逃げ出されても……困る」
恵美が顔を輝かせるのを押さえ込むように、グイグイ指を押し込んで、彼女の言葉を封じてしまった。
そんな乱暴な仕草でも。
恵美は嬉しくて仕方がなかった。
悩んでいるのは、自分だけではないと分かったから。
和成も、彼なりに……色々考えていたのだと、気付いたから。
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