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「だから」
和成の指を、やっとのことで押しのけると、彼は続けた。
「俺の前から消えんなよ」
『好きな人が出来たら、世界が輝いて見えるようになった』なんて、嘘ばっかりだと思っていたけれど。
本当だったんだ。
「聞いてる?」
「は……はい!」
彼の胸にすがるように体を預けて、体温を感じていると、目に見えるもの全ての色が変わってしまったように見えた。
どれもこれも、見慣れたものばかりのはずなのに、色鮮やかで、綺麗で。
「和成……先輩っ」
「だーかーら。『先輩』は余計だっつーの」
新しい感情が、体の奥底から次々に湧き上がってくるのを、感じていた。
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