Ⅲ

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啓介に諭されて、シュンと落ち込んでしまった。 「そうです……よね」 「まあ、楽しみに待ってれば良いんじゃない?」 「そうなんですけど」 ふうっと吐き出した息は、興奮しているせいか、熱っぽくて。 期待しているのだと気付かされた。 「カズが何するか、楽しみだね」 「……はいっ」 『ん』と、啓介がグラスを差し出してくれるのを受け取って、ようやく手にしていたグラスの中身がすっかりぬるくなっていたことに気がついた。 新しいグラスは、ドキリとしてしまうほど冷たい。 それに気をとられていたのが、良かったのだろうか。 「フミさんとさあ……何か、あったでしょ」 唐突に啓介が言った言葉に、なんとか体を震わせずに済んだ。
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