Ⅲ

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頷きながら、恵美は映像が頭に浮かんでくるのを止めることは出来なかった。 先が気になって。 思わず前のめりになりながら、啓介の言葉を待つ。 「なんだ?って、思うじゃん? 気になって、フミさんの後ろから覗いてみたんだよ。 そしたら……」 話が、途切れた。 しかし、その時の様子はなんとなく想像がついて。 躊躇う啓介に代わって、恵美の方があとを続けた。 「キス……してるところだったって、ことですか」 「あ、いや……。本当に、その……してたのかまでは、見えなかったんだ。 カズの背中に、ほとんどジュリさんは隠れちゃってたから。 でも」 と、一度言葉を切ってから、彼は思い切ったというふうに口を開いた。 「その時、フミさんが言ってたんだ。 『キスしてる』って」
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