Ⅲ

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啓介は妙にしみじみした声で言っていたが、恵美は納得できない思いがどこかにあって。 反発するように、小さな声ながらもしっかりと言った。 「……そんなの、べつにスゴいとか……そういうんじゃないと思うんですけど」 しかし彼が間髪入れずに 「そんなことないよ」 と言い返してきたのにはビックリしてしまって。 つい迫力に飲み込まれて、言葉が出なくなってしまった。 「そんなことないよ」 啓介は、もう一度繰り返してから、小さく笑う。 そして、深く息をはいた。 「まあ、そういうところが恵美ちゃんらしくて。 いいんだけどね」
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