Ⅲ

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「はあ……」 なんだか、よく分からない展開に、頭がついていかない。 なんと答えればいいのか分からないまま、とにかく頷いていると、啓介が満足そうに頷き返してソファーにもたれかかったのが見えたから、多分間違った反応ではなかったのだと思った。 「今日は、平和でいいねえ」 突然、彼が天井を見上げながら、のんびりと言ったものだから、思わず恵美は笑ってしまった。 「平和……ですね」 「フミさんとジュリさんが来ないの、久しぶりだからさ。 なんか、妙に静かに感じるよね」 「そうですね。最近、よく来てますよね」 恵美の言葉に、啓介は不意に考え込むように口を閉ざしてから、目を閉じた。 「なんで急に来るようになったのかなあ……」 疑問の声が、誰に答えてもらえるわけでもなく、ふわふわと浮かんで。 煙のように散ってしまうのを見計らったかのように、元気な声が飛び込んできた。
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