Ⅲ

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いつも強引で、なんにも説明してくれない、和成。 しかし、 「先輩っ。里美たちとの話し合いは終わったんですか?」 という恵美の言葉に体を震わせると、不意に足を止めた。 それから、恵美の肩越しに辺りの様子を窺って 「それは、まだだけど。ちゃんと考えてるから、お前は心配すんな」 と彼女の頭をかきまわした。 「とにかく、今は脱出だ。もう、フミさんたちにゴチャゴチャにされたくねえから」 唇を尖らせた彼は、いたずらっ子のように笑っていた。 スルリと腕からはずされた手が、いつの間にか彼女の指を包んでいることに気がついて。 ただ手をつないでいるなのに、その暖かさを意識すると、まるで守ってもらっているような、おかしな気分になってしまった。
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