Ⅲ

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「嫌だ」 それは、当然、予想できた彼の言葉。 しかし今日の恵美は、いつになく強気だった。 「えー、いいじゃないですかあ。 行きたいところを聞いてきたのは、先輩の方なんだし」 と、食い下がる。 が、彼女の声が高くなればなるほど、和成の声は低さを増す一方で。 「俺、猫が好きなわけじゃないんだけど……」 などとブツクサ言ったまま、動こうともしなくなってしまった。 「せんぱーい」 まるで餌をねだる猫のように身をすり寄せてみても、無反応。 そっぽを向いて、固まっていた。
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