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クルリと思い切ったように振り向いた彼は、開口一番
「入らん」
と言ってのけて、先に立って歩いて行ってしまったのである。
ところが、追いかけようと早足になった恵美が彼に並んだ時。
「じゃあ……まあ。今度、な」
唐突に、訂正した。
「今度って……」
思いがけない言葉に驚く彼女に、和成は言った。
「だから。お前の誕生日。そん時なら、行ってやるよ。
しょーがないから」
吐き出したのは、溜め息だったのに。
彼の唇の端が、かすかに引き上げられているのを、恵美は確かに見た。
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