Ⅲ

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あとでかけ直そうとして、忘れてしまったことにしてしまえばいい。 キリキリと胸は痛むばかりだったが。 せっかく文雄とジュリのもとから逃げてきたというのに、邪魔をされたくはなかった。 啓介に言ったとおり、『今は上手くいっている』のだ。 だったらそれを、ぶち壊しになんてされたくはない。 どんなに早く歩いても、鞄の中で震えている携帯電話を感じずにはいられなかったけれど。 気にしないように努めた。 もしかしたら、もう鳴っていなかったのかもしれない。 彼女の罪悪感が、そう感じさせていたのかも、しれない。 そう思えるほど、いつまでも、いつまでも、携帯電話は振動し続けて。 「あ、あの公園に行ってみませんか?」 「どこ?ああ、あそこか。いいよ、行くか」 彼女の心を、乱した。
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