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あとでかけ直そうとして、忘れてしまったことにしてしまえばいい。
キリキリと胸は痛むばかりだったが。
せっかく文雄とジュリのもとから逃げてきたというのに、邪魔をされたくはなかった。
啓介に言ったとおり、『今は上手くいっている』のだ。
だったらそれを、ぶち壊しになんてされたくはない。
どんなに早く歩いても、鞄の中で震えている携帯電話を感じずにはいられなかったけれど。
気にしないように努めた。
もしかしたら、もう鳴っていなかったのかもしれない。
彼女の罪悪感が、そう感じさせていたのかも、しれない。
そう思えるほど、いつまでも、いつまでも、携帯電話は振動し続けて。
「あ、あの公園に行ってみませんか?」
「どこ?ああ、あそこか。いいよ、行くか」
彼女の心を、乱した。
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