Ⅳ

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恵美はブツクサ言ったが、和成はもうヒラヒラと追い払うように手を振って 「俺の分まで、存分に触れ合って来い」 と言うだけで。 漫画本から少しも顔を上げることなく、足を組みなおしたりしているのだった。 「なんでー?」 これには恵美も不満がないではなかったが。 ちょうど彼女に向かって歩いてきた店員の女性に目を留めた。 「うわあ……黒いっ」 真っ黒な毛並みに、作り物かと思ってしまいそうな黄色い瞳の猫を、重そうに腕に抱えてやってきた女性は、ふと恵美に気がつくと 「ココアちゃんって言うんですよお。ちょっと重いですけど、抱いてみます?」 猫にも負けないほど可愛らしい笑顔で、話しかけてきた。
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