Ⅳ

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しかし、恵美が落胆して背中を見送るまでもなく、猫はピョンと跳ね上がると、ソファーの上に華麗に着地。 そして。 「なんだ、こいつ」 和成の不機嫌そうな声が聞こえたかと思えば、彼の膝の上で、もう寝る体勢を整えだしたココアちゃんが目に入ったのだった。 「あー、今度は先輩のほうに行っちゃった」 「こいつ……恵美のとこで寝てたやつ?」 「そうですよお。先輩、やっぱり嫌われてなんかないじゃないですかあ」 恵美はクスクス笑ったが、和成は戸惑ったように 「いや、猫が自分から近寄ってきたことなんかないぞ」 と言って、どうしたら良いのか分からぬ様子で目をパチパチさせている。 これには恵美も堪えきれずに、声を上げて笑ってしまった。
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