Ⅳ

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「気に入られたんですよ。ほら、ちょっと撫でてみてください。 すっごいフワフワなんですよ?」 恵美は猫を起さぬように、静かに和成の隣に腰掛けると、彼の腕を猫へと押しやった。 が、どうにも苦手意識のあるらしい彼の腕は緊張のせいか、カチコチに固まって、動きがぎこちない。 それでも、一足先に猫の頭に手を乗せた恵美を真似るように、そっと彼の手も、猫の背中へと添えられた。 「はあ……あったかいもんだなあ」 「でしょお?人形みたいですよね」 「こんなに良い毛皮着てたら、あったかいだろうな。 あ、でも夏は暑そうだ」 恵美とは感想が違っているようだったが、それはそれで面白かった。 和成の新たな一面が見えたような気がして。 今なら猫にも負けないほど、胸が熱い自信がある。
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