Ⅳ

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「……こいつ、完全に寝てんじゃん」 「先輩の膝が寝やすいんじゃないですか?」 「いつまでいる気なんだよ」 「そんなの……ココアちゃんに聞いてもらわないと。 でも、あのお姉さんは30分でも1時間でも居座る時があるって言ってましたよ」 恵美が言うと、和成は情けないような顔になって呻いた。 「1時間?」 「いいじゃないですかあ。私なんて、他の猫ちゃん、全然寄って来ないですし。 つまんない」 唇を尖らせながら恵美が辺りを見回していると、灰色の猫が一匹近づいてくるのが見えた。 が、彼女が笑顔で手を伸ばすと、すぐに背を向けて走っていってしまったのだった。
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