Ⅳ

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「……お前、嫌われてんじゃないの」 「そんなあ。さっきまで、ココアちゃんは私の膝にいたんですよ?」 「でも、ココアちゃんは俺の膝の方が寝やすくていいってさ」 和成はいつしか、得意気に笑って黒猫の背を撫でていた。 その手の大きいこと。 猫の頭などはすっぽりと隠されてしまうほど大きな手に、恵美は思わず目がひきつけられてしまって。 「いいなあ……」 知らず知らずのうちに声に出して呟いてしまっていた。 猫が羨ましかった。 自分も、同じように彼に触れてほしい……なんて、考えただけでも頬が緩む。 「なにが?」 キョトンとした和成は、訊ねたけれど。 我に返った恵美は、それに答えるわけにもいかずに 「な、なんでもないですよっ」 と慌てて首を振った。
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