Ⅳ

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「はあ……」 「先輩ってば。ため息、重すぎ」 小さく笑ってしまった恵美は、慌てて口を抑えたけれど。 目をやった先の和成は、疲れきった表情で椅子の背に頭をもたげていて、恵美を睨む余裕もないようだった。 「あー、疲れた」 「せっかく癒されに行ったのに、疲れちゃったんですか?」 ねこカフェを後にして、適当な店に入っても尚、不満げな表情だった和成。 けれども、あまりに不安になった恵美が 「……つまんなかったですか?」 と恐る恐る訊ねると、ようやく笑顔を見せてくれて。 「まあ、楽しかったって言えば……楽しかったか。 恵美より俺の方がココアちゃんに好かれてるっていうのも、分かったことだし」 いつもの意地悪な口調まで取り戻したのを聞くと、からかわれているにも関わらず、笑みがこぼれてしまった。
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