Ⅳ

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「……それなら、良かったです」 「良かったって……。 俺に負けたって分かって、良かったってこと?」 「ち、違いますよ!そうじゃなくって……」 まだ夕食というには早い時刻。 それでも、あっという間に料理を平らげてしまう和成を見ていれば、自然と恵美も食欲が沸いてくるような気がして。 空腹なんて感じていないと思っていたはずなのに、気がつけば皿は空っぽになってしまっていた。 「あー、お腹いっぱい。まだお腹空いてないって思ってたのに……結局、全部食べちゃった」 「腹減ってなかったの?そのわりには、ガッツリ食ってたじゃん」 和成にニヤニヤ笑われて、恵美は顔を赤くして反論する。 「いや、だって……先輩がおいしそうに食べてたから、つられちゃって」 「俺のせいかよ」 「そうじゃなくって。あ、ほら。よく食べる男の人って、素敵ですよね。 そういうのって、女の子から見たら嬉しくなっちゃうっていうか……。 手料理を作っても、ちゃんと食べてくれそうな気になりますしっ」
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