Ⅳ

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ペラペラとまくしたてて、ハッとした。 和成が口角を上げて目を細めるのを見た時、なにか意地悪なことを言われると直感したから。 「へえ、手料理ねえ……」 「あ、いや。私のことじゃなくて、一般的な女の子の話っていうか……」 しどろもどろになりながら、言い訳を並べてみても、もうすっかりニヤニヤ笑い出した和成の瞳からは、優しい光が消え去っていた。 「じゃあ、恵美ももちろん、『一般的な女の子』の中に入るよな?」 「ま、まあ……特殊なわけではないと思いますけど」 答えるのがやっとの恵美は、もう何を言っているのか自分でも分からない。 和成が楽しそうに吹き出しても、何を笑われているのかさえ、分かってはいなかったのである。 が、彼女の嫌な予感だけは当たっていたらしかった。 「じゃあ、今日……手料理作ってもらおうかな」
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