Ⅳ

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「そ、そんなお世辞言ったって、出来ないものは出来ないんですからね!」 と、意地を張り続けていたはずの恵美。 けれども、彼女の足は明らかに抵抗する気配をなくしていて。 「……単純なやつ」 「えっ?な、なんでですか?」 和成に引かれるがまま、スーパーの中へと足を踏み入れていたのだった。 恵美が手にしたカゴを奪い取って、腕にかけた彼の目は、笑いを堪えきれないというふうに揺れていた。 「べつに。 俺、なに買うかとか全然分かんねえから、カゴ持っとく。 適当に、買うもん入れて」 「は、はあ……」 そう言われても、何を買えばいいのやら、さっぱり分からない。 冗談ではなく、本当に分からないのである。 そこで取り出したのは、秘密兵器 「こ、これを見て買ったほうがいいですよね!」 『彼氏につくってあげたい料理、ベスト50』。
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