Ⅳ

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「せんぱ……いっ」 「おっと」 彼は無理に彼女の腕をひくと、支えきれなくなって倒れこんだ恵美の体を膝に乗せるようにして、受け止めた。 「……危ないじゃないですか」 「ちゃんとキャッチしたんだから、いいだろー」 「そういう問題じゃ……」 恵美は言いかけたが、和成の瞳がまっすぐ彼女に向いているに気がつくと、声が出なくなってしまった。 そして、彼の指がエプロンをつまむのを、黙って眺めていた。 「……似合ってるよ」 彼の声に、背筋がゾクゾクする。 それでも恵美は、必死に平静を装って答えた。 「本当に、そう思ってますかあ?」
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