Ⅳ

43/68
前へ
/632ページ
次へ
「思ってるよ」 和成の指が、重力に従うように下がっていく。 エプロンのポケットをいじってみたり、裾をつまんでみたり。 一ヶ所に留まることなく動き回りながら、スカートからスラリと伸びた彼女の膝に触れた。 「すっごい、可愛い」 わざとらしく、耳に唇をつけて囁くものだから、どうすることもできずに、体が跳ねてしまう。 彼に操られてでもいるように、意思とは関係なく動く体が恨めしかった。 「絶対、思ってないですよね」 憎まれ口を叩いて、少しでも抵抗しようと思ったのに。 「思ってるって。食べちゃいたいくらい、可愛い」 彼の甘ったるい囁き声が耳から流れ込んでくると、骨抜きにされてしまったんじゃないかと思うほどに、体から力が抜けてしまうのだった。
/632ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3303人が本棚に入れています
本棚に追加