Ⅳ

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「何って……いいじゃん、別に。 恵美の顔、見たいんだって」 からかうように言ったまま、やはり和成は、ほんの僅かな距離を保ったまま、動かない。 触れそうで触れない唇が、なんだか、もどかしかった。 何に触れるでもない時間が、ゆったりと過ぎていく中で、段々と物足りなさだけが募ってきて。 薄く唇を開いてみたり、ツンと突き出してみたりしながら、その時間をやり過ごす。 が、一向に近付く気配のない彼に、とうとう恵美は、また口を開かなければならなかった。 「せ、先輩……!この中途半端な距離だと……気になっちゃうんですけど」 「ええ?いいんだって。気にすんなよ」 彼は爽やかに笑ったけれど。 もう恵美はじれったくて仕方がなくて。 「そんなこと言われても……気になっちゃいますよおっ」 と不平を漏らしたところで、ようやく彼はコツンと額を彼女のものにぶつけて、言った。 「それって、離れてほしいってこと? それとも……近づいてほしいってこと?」
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