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「な、な……な!?」
それ以上、言葉が続かなくて、日本語になりきれない音を発する恵美。
そして、やはりこの僅かの距離を縮めることなく、笑っているだけの、和成。
言い合いは、いつまで経っても平行線で。
こんな時は、いつも先に折れるのは恵美のほうなのだけれど。
やはり今回もそれは例外ではなく、終わってしまうのだった。
「離れるんだったら、ち、近付いて欲しいです……」
「近付いて?じゃあ、これくらい?」
熱くて熱くて。
オーバーヒートしてしまっているんじゃないかとさえ思えるのに。
彼は見せ付けるように、本当にほんの少ししか、近付いてくれないから。
恵美は震える指になんとか力をこめて、彼のシャツの胸元を掴みながら、
「……もっと」
消え入りそうな声で、囁いた。
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