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「せんぱーい……」
仕方なく、起してみようと声をかけてはみるものの、和成はなんだか寝起きの機嫌が悪いような気がして、遠慮がちにしか声が出せない。
そして、そんな声量では、やはり彼はビクリともしなくて。
途方にくれた恵美は、もう開き直って彼の肩を揺さぶってみることにした。
「先輩っ。せんぱーい。起きてくださいよお」
が、起きない。
そこで
「ねえ!先輩ってばー!」
寝ているのを良いことに、力いっぱい腕を揺らしてみる。
と、
「あー……?」
ようやく彼は、目をこすりながら顔を上げたのだけれど。
妙に色気を感じさせるその仕草に、思わず彼女の目は釘付けになってしまって。
薄く開いた唇を閉じることも忘れていた時。
和成の腕が素早く伸びてきたかと思えば、彼女の手首を力いっぱい引き寄せたものだから、彼女は彼の上に倒れこんでしまった。
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