Ⅳ

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「な、なに言ってるんですかっ」 恵美が慌てて言う。 しかし和成は至って冷静に、口を開いた。 「だって……そうでもしなきゃ、お前に手出しできないじゃん」 「へ?どういう意味ですか?」 「だからー。 俺だって一応、我慢してるわけよ。 ……理性が働いてる時は、ね」 和成はガシガシ頭をかきながら、横目でチラチラと恵美を見ていた。 その頬が心なしか、ほんのり赤く染まっているような気がして。 思わずドキリさせられる。 「でも、寝ぼけてる状態だったら手出したとしても、俺のせいじゃないじゃん?」 「いやいや……寝ぼけてても、無罪にはならないと思いますけど」 「そうなの?」 フワリと笑った彼の横顔に、見とれてしまった。 口を開けば可笑しな事ばかり言うような人だけれど、やっぱり、こうして見れば、整った顔立ちが眩しくて。 「私は……先輩になら、手を出されても良いんですけど」 爆弾発言をしてしまったのは、そんな彼に可笑しな影響をうけてしまったからだったのだろうか。
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