Ⅳ

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「なに言ってんの、お前」 和成は、かすれた笑い声を上げたけれど、その目は少しも笑っていなかった。 あっという間に笑い声が消え去ったかと思えば、真剣な瞳をまっすぐに彼女に向けて。 思いつめたような声で、囁いた。 「それ……本気で言ってんの?」 意志とは関係なく、体が彼の声に反応してしまう。 ドキドキ、ドキドキ、心臓の音がうるさくて、彼に聞かれてしまうんじゃないかと、不安で。 距離を取ろうと後ずさるのに、彼はそれを阻むように体を寄せてくる。 「恵美……」
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