Ⅳ

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彼の瞳に魅せられてしまったように、目が離せない。 「あ……」 なにか言わなければいけないと思っているのに、喉がそれを拒む。 ゆっくりと伸びてくる彼の指だけを見つめて。 次に起こる出来事を予想することも出来ずに、息を詰めたまま待っていた。 そっと頬にふれた彼の指が、自分以上に熱いことに驚いて目を上げると、彼はちょっと困ったようにこちらを見ていた。 そして、もう一度、甘い声で彼女の名前を呼んでから、思い切ったように大きな手のひらを彼女の頭に置くと、ポンポンと優しく撫でたのだった。 「ばーか」 そう笑う彼の声は、もうすっかり緊張の糸が解けたように、さっぱりとしていた。 恵美が思わず拍子抜けしてしまうほど、晴れ晴れとした笑い声を上げて、いつも通りの意地悪な目を恵美に向ける。
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