4:昔のことを言うと鼠が笑う

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不意に鞄の中で震える携帯電話に我に返った恵美は、それを手にとって眺めた。 並んでいる名前を目にした瞬間、反射的に体が強張る。 それでも、彼女はほんの数秒しか、悩まなかった。 「はい」 通話ボタンにかけた指はかすかに震えていたくせに、思いがけず声はシャンとしている。 まだ感覚が麻痺しているのかもしれない。 悪夢から覚めきらない体が、重い。 「もしもーし、恵美?今から会おうよ」 今日ばかりは、文雄の軽々しい言葉に、身を委ねてしまいたかった。
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