Ⅰ

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「泣かないの。 俺が泣かせてるみたいに思われるでしょー」 「……すみません」 コツンと頭が当たったのは、骨ばった文雄の肩。 押し付けるように触れている耳の上の辺りから、ジワジワと彼の体温が伝わってくる。 肩にかかった文雄の指が、まるでリズムでも刻んでいるように動いて。 そのリズムに意識を集中していれば、心が安らいでいくのを感じた。 「別れたくなっちゃうくらい、つらいことがあったんだー?」 「……はい」 「『何があったの?』って……聞いても、いいの?」
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