Ⅰ

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「なんか……上から目線な言い方になっちゃうんですけど。 彼女が他の男の人と……そういうことしてるのを見るなんて、可哀想だなって思っちゃったんです。 私なら、絶対に耐えられないって」 『でも』と言葉を並べていく恵美の声は、自分でも分かるほど弱々しくて。 少しでも気を抜けば、泣いてしまいそうなのに、力を入れれば入れるほど震えてしまう。 どこにどう力を入れたら良いのか、考えている間にも視界は涙の膜がかけられて、今にもこぼれ落ちそうだ。 「フミさんは……強いんですね。 私は、和成先輩とどんな顔をして会えばいいのかも分からなくて……。 会いたくないって思っちゃうのに。 フミさんは、ちゃんと辛いことを乗り越えて、今でもジュリさんと一緒にいるんですから」
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