Ⅰ

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文雄は、恵美の言葉に表情を固くした。 それから、眉間にシワを寄せて俯くと、ぶっきらぼうに言った。 「別に、そんなに良い意味でジュリと一緒にいるわけじゃねえよ。 ただ、そんなことで別れるのは悔しかっただけで。 あいつのことを、そこまで好きとか……そんなんじゃないし」 冷たく言う彼の口調は、淡々としたものだった。 さっきまでの軽い調子とは打って変わって、ぎこちない。 が、恵美が見ていることに気がついた彼は、ちょっと笑ってから、途端に明るい声になって続けた。 「……なーんてね。 俺、負けず嫌いだからさ。 後輩のカズに、ジュリに手を出されたのは、かなり悔しかったわけよ。 だから……復讐してやろうと思ってるんだなあ」
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