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そう言いながら、さも当然のように顔を寄せてくる文雄の動きはあまりにも自然で。
一瞬、それが当たり前の行動なんじゃないかと錯覚してしまうほどだった。
それでも。
頭で考えるよりも先に動いたのは、強張ってしまっていた体のほうで。
気がつけば、恵美は力いっぱい文雄の胸を押して、彼との距離を保っていた。
「……なに?」
不思議と、怒った口調になるでもなく、文雄の声は冷静だった。
どちらかと言えば、恵美の方が自分の行動に驚いてしまって、すぐに返事が出来なかったほどである。
が、彼女は、カラカラに乾いた喉を潤そうと烏龍茶を一気に飲み干してから、思い切って言った。
「私は、復讐しようなんて、思ってません」
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