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「無理矢理って……だから、あっちが先って言ってるでしょ」
「お前の言葉なんか、信じられねーよっ」
「そんなこと言ったって……」
ヒートアップしていく2人の会話を聞きながら、一人輪から外れて、頭を冷やしながら文雄の様子を窺っていると、やはり彼の顔は険しさを増していた。
いつもは人と距離を取って、自分のペースで歩いているような人なのに。
彼の余裕は、すっかりどこかへ吹き飛んでしまったらしい。
これに、和成も違和感をおぼえたのだろう。
とうとう、返答に詰まった彼は、ちょっと考えるように間を置いてから、やけに真剣な声で言ったのである。
「フミさんって……意外にジュリのこと、気にしてるんじゃないすか」
「あ?」
もう、機嫌の悪いのを隠しもしないで、低い声を出す文雄。
それに対して和成が小さく笑うと、文雄は分かりやすいほど極端に眉根にシワを寄せた。
「別に、気になるわけじゃねえよ。
俺は、一応あいつと付き合ってるってことになってるけど……それは、ジュリがいつまでも……」
文雄が言いかけたところで、口を半開きにしたまま固まってしまう。
どうしたのだろうと、恵美が疑問に思った時。
「悪かったわね。どうせ、私の勝手ですよーだっ」
ジュリの甲高い声が響き渡って、場が静まりかえってしまったのだった。
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