Ⅰ

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「そんなわけないでしょっ」 「はあ?だから、お前は……」 ジュリと和成の不毛な言い合いが続く中、文雄はつまらなそうに唇を尖らせて、口を挟んだ。 「そんなの、どうだっていいって。 そんなことより、お前ら、最初っから2人でいたわけ? なんで、ここに来てんの?」 恵美にも、やはり気になる質問。 口を開きこそしなかったものの、相槌をうつように、かすかに頷いて和成を見る。 すると彼は、文雄をチラリと見てから、恵美に顔を向けた。 「俺とジュリで、恵美とフミさんを探してたんだよ。 俺が呼んだのに、お前が全速力で逃げてくから、途中で見失っちゃってさ。 で、やっと見つけたと思ったら、ジュリが急に、フミさんに会いたくないって言い出して……」 「そういう言い方しないでよ。 なんだか私がフミを怖がってるみたいじゃないの」 横から口出しを始めたのは、もちろんジュリである。 彼女は眉を上げ下げしながら、恵美と文雄を交互に眺めた。 「そうじゃなくて。私は、ただ……2人の邪魔をすることになるんじゃないかなあって、思っただけ」
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