Ⅰ

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「……ここまで来て、それを避けてたら話になんねえだろ」 「だから、それは!」 またしても繰り返される和成とジュリだけに通じるやり取りに、文雄は我慢の限界だったらしい。 ガタリと音を立てて椅子を引くと、今度は彼が和成とジュリの間に割り込んで。 和成からジュリを引き剥がすようにして、掴んだジュリの手首を自分に引き寄せた。 「いい加減に、俺にも分かるように話せよ。 いつまで2人だけで話してんだ」 「だって……」 ジュリが唇を尖らせる。 すると、なにを思ったか、文雄は苛々を爆発させたように肩を震わせて。 思いっきり和成を睨みつけた後、ジュリに視線を戻したかと思うと、勢い良く彼女の腰を自分の側に抱き寄せて。 彼女が避ける暇も与えぬままに、無理矢理に唇を重ね合わせたのである。
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