Ⅰ

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「浮気……?」 急に、力の抜けたジュリの声。 それにいち早く反応したのは和成だった。 「浮気なんか、してないけど」 「は?」 間の抜けたような、ほんの少しの沈黙。 けれども文雄の口調からは、さらに苛々が募ったのが伝わってくるようだった。 「だから、もう言い訳はいいってば。 もう、ここまで話が来てるんだから、隠し事は無しにしようぜ?」 「いや、だから……」 粘るように和成は言い、ジュリも加勢するように口を開きかけたが、文雄はそれを遮った。 「あー、もうっ。俺、見てたんだからな。 お前とジュリがキスしてたの。 今日とかのじゃねえよ。 昔……俺の家で、飲み会やった日のやつ」 言い終わると、ジュリと和成が目を見交わしたのを確認するように間を置いて。 顔色の変わった2人を、ほら見ろと言わんばかりに睨みつけながら続けた。
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