Ⅰ

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ジュリがあまりにもキッパリと言い切ったことが、文雄には面白くなかったらしい。 彼はあからさまにムッとした顔になって、唇を尖らせた。 「お前からって、なんだよ。なんでカズをかばうんだ?」 「だから、かばってなんかない。本当のことを言ってるだけ」 「だって……」 「いいから。あんたは、ちょっと黙ってて」 文雄の言葉を遮ってジュリが一喝すると、文雄は薄く開きかけた唇を少しの間動かしていたが、やがて諦めたようにきつく結んでジュリを見た。 ジュリの隣では和成が、何か言いたげに彼女を見つめている。 が、ジュリは文雄にまっすぐ顔を向けたまま、その他の人物には目もくれずに口を開いた。 「さっきフミが言ってた……フミの家で私がカズくんにキスした日。 フミ達が買い出しに行ったでしょ?」 「ああ。その間に、俺のいないところでお前らは浮気してたんだもんな」 嫌味たっぷりに文雄が言う。 が、ジュリはちょっと悲しげに眉を下げただけで、それには答えずに続けた。 「あの時……私とカズくんが留守番してる間に、女の子が訪ねて来たの」
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