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「はあ……」
恵美は溜め息のような声を漏らした。
急にジュリの目が自分に向けられたことに、緊張がはしる。
彼女の感情が伝わったのか、和成も居心地悪そうに座り直してから、顔を上げた。
「おい……」
「うん」
和成の声に、ジュリは躊躇うように口を閉ざした。
が、それも僅か数秒のこと。
すぐに思い直したように小さく首を振って、再び話し始めた。
「私、悔しくて。
あー、『悔しい』っていうのは、なんか違うかなあ。
でも他に良い言葉が見つかんないや」
自嘲気味に笑うジュリの瞳が、また涙でいっぱいになる。
それを隠すように、彼女は前髪を直す仕草をしたが、その指の間から小さな雫がこぼれ落ちるのを、恵美は見逃さなかった。
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