Ⅰ

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「はあ……」 恵美は溜め息のような声を漏らした。 急にジュリの目が自分に向けられたことに、緊張がはしる。 彼女の感情が伝わったのか、和成も居心地悪そうに座り直してから、顔を上げた。 「おい……」 「うん」 和成の声に、ジュリは躊躇うように口を閉ざした。 が、それも僅か数秒のこと。 すぐに思い直したように小さく首を振って、再び話し始めた。 「私、悔しくて。 あー、『悔しい』っていうのは、なんか違うかなあ。 でも他に良い言葉が見つかんないや」 自嘲気味に笑うジュリの瞳が、また涙でいっぱいになる。 それを隠すように、彼女は前髪を直す仕草をしたが、その指の間から小さな雫がこぼれ落ちるのを、恵美は見逃さなかった。
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