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『それで』と続けるジュリが、チラリと恵美を見た。
濡れた瞳が怯えたように揺れていて、恵美まで不安になる。
「それで……さ。オロオロしてる私を、見かねたんだろうね。カズくんは。
ガシッて肩をつかんで、思いっきり揺さぶってきて。
もう、意識ふっ飛ぶかと思ったわ」
目を細めながら。
ジュリの頬に涙が伝う。
それでも彼女は、それを拭おうとはしなかった。
「ようやく私も、カズくんの存在を思い出して。
人のいるところで泣くのは嫌いだから、泣きたいのも堪えてたんだけど、もう我慢もできなくて。
でも、見られたくなかったから……。
顔を隠そうと思って抱きついちゃったの」
結果がわかっているのだから、当然、予想できた話の流れ。
しかし、ジュリの話に集中しすぎてしまっていた恵美に、先を見通すだけの余裕はなくて、いちいちギクリとしてしまう。
ジュリは精一杯、なんでもないことのように話そうと努めているようだったが、恵美には何の効果ももたらすことはなかった。
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