Ⅰ

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『それで』と続けるジュリが、チラリと恵美を見た。 濡れた瞳が怯えたように揺れていて、恵美まで不安になる。 「それで……さ。オロオロしてる私を、見かねたんだろうね。カズくんは。 ガシッて肩をつかんで、思いっきり揺さぶってきて。 もう、意識ふっ飛ぶかと思ったわ」 目を細めながら。 ジュリの頬に涙が伝う。 それでも彼女は、それを拭おうとはしなかった。 「ようやく私も、カズくんの存在を思い出して。 人のいるところで泣くのは嫌いだから、泣きたいのも堪えてたんだけど、もう我慢もできなくて。 でも、見られたくなかったから……。 顔を隠そうと思って抱きついちゃったの」 結果がわかっているのだから、当然、予想できた話の流れ。 しかし、ジュリの話に集中しすぎてしまっていた恵美に、先を見通すだけの余裕はなくて、いちいちギクリとしてしまう。 ジュリは精一杯、なんでもないことのように話そうと努めているようだったが、恵美には何の効果ももたらすことはなかった。
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